ギターをよく見ると、ボディやネックの縁に施された細い装飾があることに気づいたことはありませんか?これが「バインディング」と呼ばれるもので、ギターの見た目をグレードアップさせるだけでなく、保護機能も備えています。高級ギターのマーチンD-45やギブソン・レスポールなどに見られるこの装飾を、自分のギターにも後付けしたいと考える方は少なくありません。本記事では、ギターバインディングの後付け方法やメリット、コストなどを詳しく解説します。
ギターバインディングとは?その役割と魅力
バインディングとは、ギターのボディやネック、ヘッドの縁を囲むように施された装飾的な縁取りのことです。単なる装飾としての役割だけでなく、木材の端を保護する機能も持ち合わせています。
バインディングの種類と素材
バインディングには様々な素材と種類があります:
- プラスチック(セルロイド、ABS): 最も一般的な素材で、様々な色や模様(ホワイト、ブラック、べっ甲柄など)があります
- 木材: エボニーやメイプルなどの木材でシンプルな見た目のバインディング
- アバロン(あわび貝): 高級ギターによく使われる、輝きのある装飾的な素材
- パーフリング: バインディングの内側に施される細かい装飾ライン
バインディングがギターに与える影響
バインディングはギターに次のような影響を与えます:
- 見た目の高級感: マーチンD-45やギブソン・レスポールのように、バインディングは楽器に高級感を与えます
- 耐久性の向上: 特にボディの角の部分を保護し、傷や欠けを防ぎます
- 弾きやすさ: ネックバインディングは、指板エッジの感触を滑らかにし、演奏性を向上させます
ギターバインディングを後付けする方法
すでに所有しているギターにバインディングを施す方法はいくつかあります。DIYから専門家への依頼まで、各方法のメリットとデメリットを見ていきましょう。
DIYで行うバインディングステッカーの選び方と貼り方
DIYでバインディングを後付けする最も簡単な方法は、バインディングステッカーを使用することです。
バインディングステッカーの特徴
バインディングステッカーは、一般的に以下のような特徴があります:
- 伸縮性のある素材でギターのボディのカーブに沿って貼ることができる
- アバロン風、ブラックパール、ホワイトなど様々なカラーが用意されている
- 幅も2mmから5mmまで選べるものが多い
- 価格は3,000円〜5,000円程度のものが多い
貼り方のステップ
- 準備: ギターのボディを脱脂し、埃や汚れを取り除く
- 採寸: ギターのボディ周囲の長さを測定し、適切な長さのステッカーを用意する
- 仮合わせ: 貼る前に位置を確認する
- 貼り付け: 慎重に少しずつステッカーを貼っていく(気泡ができないよう注意)
- 仕上げ: ステッカーの端をカットし、きれいに整える
DIYバインディングは比較的手軽に試せる反面、本物のバインディングと比べると耐久性や見た目の高級感では劣る場合があります。
プロに依頼する場合の費用と工程
本格的なバインディングを希望する場合は、ギターリペア専門店に依頼するのが確実です。
費用の目安
リペア店によって金額は異なりますが、一般的な相場は以下の通りです:
- バインディング新規取付け: 30,000円〜80,000円程度
- バインディング交換: 30,000円〜50,000円程度
- パーフリング(装飾)追加: +10,000円〜30,000円程度
プロによるバインディング施工の工程
- 設計: ギターの形状に合わせたバインディングのデザインと素材選定
- 溝掘り: 専用工具(ルーター等)でギターに精密な溝を掘る
- バインディング成形: 素材をギターの形に合わせて曲げる
- 接着: 専用接着剤で慎重に貼り付ける
- 仕上げ: 余分な部分をカットし、サンディングで形を整える
- 塗装: 必要に応じて塗装を行う
プロに依頼することで高品質な仕上がりが期待できますが、コストが高く、また工程中はギターを預ける必要があります。
ギターバインディングの修理と交換
バインディングは経年劣化により剥がれや割れが発生することがあります。特にヴィンテージギターでは珍しくない症状です。
バインディングの剥がれや割れの原因
バインディングが劣化する主な原因は以下の通りです:
- 素材の経年収縮: 特にセルロイド素材は時間とともに収縮する性質がある
- 温度・湿度の変化: 急激な環境変化がバインディングに負担をかける
- 紫外線による劣化: 長期間の日光暴露による素材の劣化
- 物理的衝撃: ギターの取り扱い時の衝撃や傷
特にマーチンギターなどの高級アコースティックギターでは、バインディングの剥がれが多く見られます。最も多いのはボディのくびれの部分や、指板エンド、ヘッド部分です。
修理方法と費用の目安
バインディングのダメージに応じて、修理方法は異なります:
剥がれの修理(接着修理)
- 症状: バインディングが部分的に剥がれている
- 修理方法: 専用接着剤での再接着
- 費用: 6,000円〜10,000円程度
- 特徴: 比較的短時間で修理可能
バインディングの交換(巻き直し)
- 症状: 割れや大きな剥がれ、変色がひどい場合
- 修理方法: 古いバインディングを取り除き、新しいものを装着
- 費用: 30,000円〜50,000円程度
- 特徴: 工期は1週間〜2週間程度必要
専門家によると、バインディングが剥がれた場合はそのままにしておくとどんどん広がっていくため、早めの修理が推奨されています。
DIYバインディング製品のレビューと比較
市販されているDIYバインディング製品にはいくつかの選択肢があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
おすすめのバインディングステッカー
1. ビンディング・ステッカー(Guitar Sticker社)
- 価格: 3,300円(税込)
- 特徴: 伸縮性のある素材で曲面に貼りやすい
- カラー: アバロン、ブラックパール、オリンピックホワイトの3種類
- 幅: 約2mm〜5mm
2. 装飾用リムテープ(汎用品)
- 価格: 1,500円〜3,000円程度
- 特徴: 安価で手軽に試せる
- 耐久性: 専用品と比べると劣る場合がある
3. DIYバインディングキット
- 価格: 5,000円〜10,000円程度
- 内容: バインディング素材、接着剤、サンディングツールなど
- 特徴: 本格的なDIY向け、ある程度の工作スキルが必要
耐久性と見た目の違い
DIYバインディング製品の耐久性と見た目は、価格や素材によって大きく異なります:
- ステッカータイプ:
- 耐久性:1〜3年程度
- 見た目:遠目では本物と見分けがつきにくいが、近くで見ると違いがわかる
- 実際のバインディング素材(DIYキット):
- 耐久性:適切に施工すれば10年以上
- 見た目:工作精度によるが、プロに近い仕上がりも可能
- プロによる施工:
- 耐久性:10年以上(素材による)
- 見た目:最も自然で高品質
よくある質問と回答
ギターバインディングに関するよくある質問にお答えします。
バインディングの耐久性について
Q: バインディングはどのくらいの期間持ちますか?
A: 素材や環境によって異なりますが、プラスチック製のバインディングは10〜20年、セルロイド製は経年劣化で収縮する傾向があり、10年前後で剥がれが生じることも少なくありません。アバロンやウッドバインディングは適切なケアをすれば非常に長持ちします。
Q: バインディングのメンテナンス方法はありますか?
A: 定期的に柔らかい布で埃を拭き取り、極度な湿度や温度変化からギターを守ることが基本です。また、直射日光を長時間当てないことも大切です。セルロイドバインディングの場合は、専用の保護剤を塗布することで劣化を遅らせることができます。
後付けバインディングと工場出荷時バインディングの違い
Q: 後付けバインディングと工場出荷時バインディングの違いは何ですか?
A: 工場出荷時バインディングは、ギター製作過程の早い段階で施されるため、より一体感のある仕上がりになります。後付けバインディングは既存のギターに施工するため、工場出荷時ほどの精度は難しい場合があります。ただし、熟練したリペアマンによる後付けバインディングは、工場出荷時とほぼ見分けがつかない仕上がりになることもあります。
Q: 後付けバインディングはギターの価値に影響しますか?
A: 一般的に、オリジナル仕様からの改造はヴィンテージギターの場合は価値を下げる傾向がありますが、専門家による高品質な施工であれば、むしろ価値が上がるケースもあります。特に、傷んだバインディングの修理や、高級素材へのアップグレードは価値の向上につながることがあります。
まとめ
ギターバインディングの後付けは、単なる見た目の改善だけでなく、楽器の保護や演奏性の向上にもつながります。簡易的なDIYステッカーから、プロによる本格的な施工まで、予算や目的に応じた選択肢があります。
特に初心者の方は、まずは手軽なバインディングステッカーから試してみるのがおすすめです。より本格的な仕上がりを求める場合は、専門店に相談するのが最も確実でしょう。また、すでにバインディングがあるギターでは、定期的なメンテナンスを行い、剥がれや割れが見つかったらすぐに修理することで、長期的なギターの価値と美観を保つことができます。
あなたのギターライフがバインディングによってより豊かになることを願っています。