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エリンギはいつからある?意外と新しい日本の食卓に定着したキノコの歴史

今ではスーパーで当たり前のように並び、様々な料理に使われているエリンギ。しかし、「エリンギっていつから日本にあるの?」と疑問に思ったことはありませんか?実は、エリンギは日本の食卓に登場してから歴史が浅く、他のきのこ類と比べると「新参者」なのです。この記事では、エリンギの起源から日本での普及までの歴史を詳しく解説します。

エリンギとは?基本情報と特徴

エリンギは、ヒラタケ科ヒラタケ属のキノコで、学名は「Pleurotus eryngii(プレウロータス・エリンジ)」と言います。白くて太い軸と茶色の平らなかさが特徴的で、コリコリとした歯ごたえが魅力のキノコです。

エリンギの基本特性

  • 分類: ヒラタケ科ヒラタケ属
  • 原産地: 地中海沿岸から中央アジアのステップ気候地域
  • 特徴: 白い太い軸、平らな茶色の傘、コリコリとした食感
  • 栄養価: 食物繊維が豊富(サツマイモの約2倍)、カリウム、ビタミンDなどを含む
  • カロリー: 100gあたり約19〜24kcal

エリンギは「白あわびたけ」とも呼ばれることがあり、その名前の通り、食感がアワビに似ていることが特徴です。クセのない淡泊な味わいで、和食、洋食、中華など様々な料理に使いやすいキノコです。

エリンギの起源と名前の由来

エリンギの原産地はどこなのでしょうか?その歴史を紐解いていきましょう。

原産地と自生環境

エリンギは、イタリアやフランスなど地中海性気候地域を中心として、ロシア南部、中央アジアなどのステップ気候地域までを原産地としています。ヨーロッパでは古くから食用キノコとして親しまれ、特にフランス料理やイタリア料理の定番食材となっていました。

名前の由来

エリンギという名前はどこから来たのでしょうか?エリンギという名前は、セリ科の植物「エリンギウム」の枯れた根に生えることから名付けられました。学名「プレウロータス・エリンジ」に由来しています。

野生のエリンギは特定の植物に寄生して生育するという特性があります。日本では野生のエリンギを見ることはできません。これは、エリンギが寄生するエリンジウム(Eryngium)というセリ科の植物が日本には自生していないためです。そのため、日本で見られるエリンギはすべて人工栽培されたものなのです。

日本におけるエリンギの歴史

エリンギは一体いつから日本で栽培され、食卓に並ぶようになったのでしょうか?意外にも、その歴史は非常に新しいのです。

日本での栽培開始

エリンギが日本に伝来したのは1993年のこと。台湾から伝わり、愛知県の林業センターで栽培が始まりました。このとき日本では、エリンギの育つエリンジウム属の植物が自生していなかったため、すべて人工栽培での生産となりました。

1993年頃に愛知県の林業センターがエリンギの栽培方法を確立し、それから日本中に広まっていきました。初期のころは、愛知県では「カオリヒラタケ」と呼ばれたり、「ミヤマシメジ」という名前も持っていたりしました。

日本での普及の停滞と爆発的人気

栽培が始まった当初、エリンギは日本ではあまり知られておらず、普及に苦戦していました。当初は知名度が低く生産も伸びなかったものの、2000年11月3日放送の『ミュージックステーション』でサザンオールスターズの桑田佳祐がエリンギ料理にハマっていることを公言し、実物をポケットから出した場面が放送されると、エリンギの出荷量が一気に10倍になるなどの反響を呼びました

この出来事により、桑田佳祐はキノコ業界では「エリンギの桑田さん」として知られるようになりました。桑田佳祐が音楽番組でエリンギを紹介したことで、多くの人が「エリンギって何?」と興味を持ち、一気に認知度が上がったのです。

「ぼくはいまコレにハマってます!」とポケットからエリンギを出した途端、一気に話題となり、スーパーで飛ぶようにエリンギが当時爆売れするようになったそうです。このエピソードは、食品業界における「セレブリティ効果」の象徴的な事例として語られることもあります。

エリンギの全国展開と生産状況

桑田佳祐の影響もあり、エリンギは2000年代に入って一気に全国に広まりました。現在では、どのような生産状況になっているのでしょうか?

主要産地と生産量

現在の国内の年間出荷量は約3万7,798トン(2022年)で、主な産地は長野県(約42%)、新潟県(約31%)、福岡県(約5%)となっています。長野県と新潟県だけで全国の約7割を占めており、特に長野県北部はエリンギの一大産地となっています。

栽培方法の特徴

エリンギは菌床栽培で主にビン栽培されます。培地の主材として広葉樹全般が使用され、コーンコブミール(トウモロコシの芯の粉末)、コットンハル(ワタの殻)も積極的に使用されています。

エリンギの栽培には、高湿度(90%以上)の環境が必要で、温度管理や換気も重要です。成長する際に二酸化炭素(CO₂)を放出するため、適切な換気が必要となります。

エリンギの特徴と栄養価値

エリンギは健康食材としても注目されています。どのような栄養価値があるのでしょうか?

栄養成分と健康効果

エリンギには、カリウム(460mg/100g)、食物繊維総量(4.3g/100g)、ナイアシン(8.1mg/100g)、ビタミンD(1.8mcg/100g)などが含まれています。特に食物繊維はキノコ類の中でも多く、サツマイモの約2倍も含まれています

主な健康効果としては以下のようなものが期待できます:

  1. 腸内環境の改善と便秘予防(豊富な食物繊維)
  2. 高血圧予防(カリウムによるナトリウム排出効果)
  3. 免疫力強化(β-グルカン)
  4. コレステロール値の上昇抑制
  5. 脂肪の吸収抑制効果

エリンギは、他のキノコに比べ糖の一種トレハロースが多く、甘みがあることが特徴です。また、トレハロースには骨粗しょう症を改善する効果があるとも言われています

味と食感の特徴

エリンギの軸は太くて肉質は緻密で、弾力に富んだ歯ごたえが良く、食感はマツタケや加熱したアワビによく似るとされています。食味は淡泊でクセがなく、香りも控えめなため様々な素材に合わせやすく、種々の味付け・香り付けを施して調理されることが多いです。

エリンギはクセのない味で、和・洋・中のどんな料理にも合います。戸外のバーベキューにもうってつけのキノコで、手で裂いて数分網焼きにしただけでもおいしいです(塩とコショウで召しあがれ)。

日本と海外でのエリンギの違い

日本で栽培されているエリンギと、原産地であるヨーロッパのエリンギには、どのような違いがあるのでしょうか?

形状と好まれる部位の違い

日本では白い軸の部分の食感が好まれ、暗室栽培により軸を長くしたエリンギが出回っていますが、自生しているエリンギはかさが大きく、軸はそれほど太く長くありません。そのため、イタリアやフランスでは主にかさの部分を食べています。

日本では暗室栽培で伸ばした柄の部分が好まれますが、イタリアでは開いた傘が好まれます。これは食文化の違いによるもので、日本人がエリンギの食感を特に重視するのに対し、ヨーロッパではかさの部分の風味を楽しむ傾向があるようです。

エリンギの選び方と保存方法

美味しいエリンギを選ぶコツと、長持ちさせる保存方法をご紹介します。

選び方

カサが内側に軽く巻いていて、軸が太くて弾力がありきれいな白色のものを選びましょう。カサの裏のヒダが変色していたり、カサに張りがなく割れているものは鮮度が落ちています

カサの色が薄い茶色で開きすぎていないものを選びましょう。軸が白くて太く、弾力があり、硬さのあるものがよいです。

保存方法

エリンギは、水分が残っていると傷みやすいため、濡れていないか確認した上、ラップで包んで冷蔵室の野菜室で保存します。3~4日以内に使い切る必要があります

料理に使いやすいようにカットし、保存用の袋に入れ、冷凍しておくと便利に活用することができます。

まとめ

エリンギは、日本の食卓に登場してからまだ30年足らずの比較的新しいキノコです。1993年に台湾から日本に伝来し、愛知県林業センターで初めて人工栽培が始まりました。当初はあまり普及していませんでしたが、2000年にサザンオールスターズの桑田佳祐がテレビ番組で紹介したことがきっかけで一気に人気が爆発。今では日本の食卓に欠かせない食材となりました。

エリンギは食物繊維やカリウム、ビタミンDなどの栄養素が豊富で、健康に良い食材です。コリコリとした食感とクセのない味わいが特徴で、和洋中どんな料理にも相性が良く、様々な調理法で楽しむことができます

日本では見かけない野生のエリンギですが、人工栽培の技術によって年間を通じて安定供給される今、私たちの食生活を豊かにしてくれているのです。普段何気なく食べているエリンギの歴史を知ると、食材に対する見方も変わるかもしれませんね。

次にエリンギを手に取ったとき、その意外と新しい歴史に思いを馳せながら、おいしく味わってみてはいかがでしょうか。