英語学習をしていて「tear」という単語に出会ったとき、「あれ?これって涙のこと?それとも破るって意味?」と混乱した経験はありませんか?
実は、「tear」は英語学習者が最も混乱しやすい単語の一つです。同じスペルでありながら、発音も意味も全く異なる2つの単語が存在するからです。
この記事では、tearとtearsの違いを完全に理解できるよう、発音の違いから実際の使い方、さらには語源や類義語との使い分けまで、具体例を交えて徹底的に解説していきます。記事を読み終える頃には、もう迷うことなく正しく使い分けられるようになっているでしょう。
tearとtearsの基本的な違い
まずは、この2つの単語を理解するための最も基本的な土台を固めましょう。「tear」と書かれた単語には、全く異なる2つの読み方と意味が存在するという事実を認識することが、すべての始まりです。
発音の違いが鍵!2つのtear
まず理解しておくべき最も重要なポイントは、「tear」には2つの全く異なる単語が存在するということです。これらはスペルが同じだけで、語源も意味も発音も別物です。
①「涙」のtear
発音: /tɪər/(ティア)
意味: 涙
品詞: 名詞・動詞
②「破る」のtear
発音: /teər/(テア)
意味: 破る、引き裂く
品詞: 動詞・名詞
この発音の違いを覚えることが、正しい使い分けの第一歩です。「涙」の/tɪər/は、日本語の「一年(year)」や「耳(ear)」に近い音です。一方、「破る」の/teər/は、「空気(air)」や「熊(bear)」に近い音で、口を少し大きめに開けて発音します。この音の違いを意識するだけで、リスニング力もスピーキング力も格段に向上します。
tearsが複数形・三単現になるパターン
「tears」と “s” が付く場合も、どちらの意味に由来するかで発音が変わります。文法的な役割も異なるため、注意が必要です。
①「涙」のtearsの場合
発音: /tɪərz/(ティアーズ)
意味: 涙(複数形)
解説: 「涙」は通常、複数粒で流れるため、日常会話では複数形の `tears` が使われることがほとんどです。
②「破る」のtearsの場合
発音: /teərz/(テアーズ)
意味: (彼・彼女が)破る(動詞の三人称単数現在形)
解説: 主語が `he`, `she`, `it` などの三人称単数の場合に、動詞 `tear` の現在形として `tears` が使われます。
書かれた文章では同じ `tears` ですが、音で聞けば発音の違いで明確に区別できます。文を読む際は、主語や文脈からどちらの意味かを判断しましょう。
「涙」のtear/tearsの使い方
ここでは、感情の表現に欠かせない「涙」を意味する tear /tɪər/ の使い方を掘り下げていきます。基本的な使い方から、豊かな感情を表現するイディオムまで幅広く学びましょう。
基本的な意味と発音
「涙」を意味するtearは、目から流れる水分を指します。感情の高ぶり(悲しみ、喜び、感動)や、あくびやゴミが入るなどの物理的な刺激によって出る涙を表現する際に使用されます。
発音: /tɪər/(ティア)
複数形: tears /tɪərz/(ティアーズ)
A single tear rolled down her cheek.
(一粒の涙が彼女の頬を伝った)
I couldn’t hold back my tears when I heard the news.
(そのニュースを聞いて、涙を抑えることができなかった)
My eyes always tear up when I chop onions.
(玉ねぎを切るといつも涙目になります。)※動詞としての用法
よく使われる表現とイディオム
涙に関する英語表現は豊富にあります。これらを使いこなせると、表現の幅がぐっと広がります。
- burst into tears
- 意味:わっと泣き出す、突然泣き出す
She burst into tears when she saw her childhood friend.
(幼なじみを見て、彼女はわっと泣き出した) - tears of joy / happiness
- 意味:嬉し涙
There were tears of joy in her eyes at her graduation.
(卒業式で、彼女の目には嬉し涙があふれていた) - bring tears to one’s eyes
- 意味:涙を誘う、感動させる
The movie brought tears to my eyes.
(その映画で私は涙が出た) - shed tears
- 意味:涙を流す(ややフォーマルな表現)
He shed tears of remorse for his actions.
(彼は自分の行為を悔いて涙を流した) - crocodile tears
- 意味:偽りの涙、空涙
He showed crocodile tears at the funeral, but everyone knew he didn’t care.
(彼は葬式で空涙を流したが、誰もが彼が気にしていないことを知っていた) - bore someone to tears
- 意味:誰かをひどく退屈させる、うんざりさせる
His long, monotonous speech bored me to tears.
(彼の長くて単調なスピーチには心底うんざりさせられた)
感情を表す例文集
涙は様々な感情の表れです。具体的な感情と結びつけて使い方を見てみましょう。
悲しみの涙
Tears streamed down his face as he said goodbye.
(別れを告げる時、涙が彼の顔を流れ落ちた)
感動の涙
The audience was moved to tears by the performance.
(観客はその演技に感動して涙した)
悔し涙
She wiped away her tears of frustration.
(彼女は悔し涙を拭い去った)
安堵の涙
Tears of relief filled her eyes when she heard he was safe.
(彼が無事だと聞いて、安堵の涙が彼女の目にあふれた)
in tearsとwith tearsの違い
涙に関する表現の中でも特に混同しやすく、ニュアンスを理解することで表現力が格段に上がるのが「in tears」と「with tears」です。それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
ニュアンスの違いを理解しよう
どちらも涙を表しますが、話者が伝えたい状況や感情の強さが異なります。
in tears
意味: 泣いている状態、涙にくれて
ニュアンス: 感情が溢れて、実際に声をあげたりしながら泣いている「状態」を強調します。コントロールが効かないほど涙を流している様子を表します。
She was in tears after the argument.
(口論の後、彼女は涙を流していた(泣きじゃくっていた))
The children were in tears when their pet died.
(ペットが死んだとき、子どもたちは泣いていた)
with tears
意味: 涙を浮かべて、涙と共に
ニュアンス: 目に涙が見える状態ですが、必ずしも激しく泣いているわけではありません。「〜しながら」という付帯状況を示し、涙を浮かべながら何かを話したり見たりしている様子を表します。`with tears in his/her eyes` という形で使われることが多いです。
He spoke with tears in his eyes.
(彼は目に涙を浮かべながら話した)
She looked at me with tears of gratitude.
(彼女は感謝の涙を浮かべて私を見た)
使い分けの実例
感情の強さや状況に応じて使い分けることで、より自然で的確な英語表現ができます。
感情が爆発している場合 → in tears
When she heard the bad news, she was immediately in tears.
(悪いニュースを聞いて、彼女はすぐに泣き出した)
感情を抑えながらも涙が見える場合 → with tears
The veteran told his story with tears in his eyes.
(退役軍人は目に涙を浮かべながら体験談を語った)
「破る・引き裂く」のtearの使い方
次に、物理的なアクションを示す「破る」を意味する tear /teər/ の使い方を解説します。不規則動詞としての活用形や、名詞としての使い方もしっかり押さえましょう。
基本的な意味と発音
「破る」を意味するtearは、紙や布などを力を加えて引き裂いたり、破ったりする動作を表します。また、比喩的に関係などを「引き裂く」という意味でも使われます。
発音: /teər/(テア)
品詞: 動詞、名詞
Be careful not to tear the document.
(書類を破らないよう注意してください)
この単語は、動詞だけでなく「破れ目、裂け目」という名詞としても非常によく使われます。
There’s a small tear in my shirt.
(私のシャツに小さなほころびがある)
He pointed to a tear in the fabric.
(彼は布地の裂け目を指さした)
過去形・過去分詞の活用
「破る」のtearは不規則動詞のため、活用をしっかり覚える必要があります。これは英語学習において非常に重要なポイントです。
現在形: tear /teər/(テア)
過去形: tore /tɔːr/(トア)
過去分詞: torn /tɔːrn/(トーン)
現在分詞: tearing /teərɪŋ/(テアリング)
現在形: I tear the paper. (私は紙を破る)
過去形: I tore the paper yesterday. (昨日、私は紙を破った)
現在完了形: I have torn my jeans. (私はジーンズを破いてしまった)
日常でよく使う例文
具体的なシチュエーションで使い方を確認しましょう。
物を破る・引き裂く
She tore the letter into pieces.
(彼女は手紙をバラバラに破いた)
The strong wind tore the banner from the pole.
(強風がポールからバナーを引きちぎった)
勢いよく動く(比喩的)
The car tore down the highway.
(車は高速道路を猛スピードで走り抜けた)
He tore out of the room in anger.
(彼は怒って部屋から飛び出していった)
取り壊す・解体する (tear down)
They will tear down the old building next month.
(来月、彼らは古い建物を取り壊す予定です)
tearsの動詞用法(三人称単数現在)
ここでは、多くの学習者が混乱するポイント、「破る」の動詞 `tear` が三人称単数現在形になった `tears` の使い方について解説します。文法的なルールを理解すれば、もう迷うことはありません。
「破る」動詞としてのtearsの使い方
主語が `he`, `she`, `a man`, `the machine` といった三人称単数の場合、動詞の `tear` は `tears` となります。この場合の発音は、もちろん /teərz/(テアーズ)です。
He tears paper when he’s nervous.
(彼は緊張すると紙を破く癖がある)
The machine tears the fabric automatically.
(その機械は自動的に布を引き裂く)
間違いやすいポイント
書かれた文章、特に主語が `She` や `He` の場合、`tears` が「涙(複数形)」なのか「破る(三単現)」なのか一瞬迷うことがあります。判断の鍵は文脈です。
判断のポイント:
1. 文脈を確認する(感情の話か、物理的な行動の話か)
2. 主語が三人称単数かどうか
3. 目的語は何か(`tears` の後に `paper` や `letter` があれば「破る」の可能性が高い)
❌ 混乱例: “She tears every time she watches that movie.”
この文は文法的に間違いではありませんが、「彼女はその映画を見るたびに(何かを)破る」という意味になり、不自然です。「涙を流す」と言いたいのであれば、以下のように表現するのが正解です。
✅ 正解:
“She sheds tears every time she watches that movie.”
(彼女はその映画を見るたびに涙を流す)
または、
“Her eyes tear up every time she watches that movie.”
(彼女はその映画を見るたびに涙ぐむ)
語源から理解するtearの成り立ち
「なぜ同じスペルで全く違う単語が存在するの?」という疑問は、言語の歴史を紐解くことで解決します。語源を知ることは、単語の深い理解と記憶の定着に繋がります。
なぜ同じスペルで違う意味?
結論から言うと、これらは完全に別の語源を持つ単語が、長い言語変化の過程で偶然同じスペルになったものです。言語学ではこのような単語を「同形異義語(homograph)」と呼びます。
「涙」のtear
語源: ゲルマン祖語に由来し、古英語では `tēar` と書かれていました。
関連: ドイツ語の `Träne` やオランダ語の `traan` と同じルーツを持ちます。
意味の発展: 古代から「目から流れる液体」という中心的な意味は変わっていません。
「破る」のtear
語源: こちらもゲルマン祖語に由来しますが、古英語では `teran` という動詞でした。
関連: ドイツ語の `zehren`(消耗する)と関連があります。
意味の発展: 「引き裂く、分離する」という意味で発達し、後に名詞としても使われるようになりました。
歴史的背景と言語学的解説
古英語の時代には `tēar`(涙)と `teran`(破る)のように、綴りが異なっていました。しかし、中英語期を経て、発音の変化や綴りの簡略化が進みました。特に15世紀以降の印刷技術の普及に伴い、綴りが標準化される過程で、これら2つの異なる単語が偶然にも `tear` という同じ形に収束したのです。現代英語では発音によって明確に区別されています。
ネイティブが教える使い分けのコツ
理屈は分かっても、瞬時に使い分けるのは練習が必要です。ここでは、ネイティブスピーカーがどのようにこれらを区別しているのか、その感覚的なコツを紹介します。
文脈で判断する方法
ネイティブスピーカーは、単語単体ではなく、常に文脈(コンテクスト)の中で意味を判断しています。以下のサインに注目することで、あなたもネイティブの思考に近づくことができます。
「涙」のtear /tɪər/ を示すサイン:
- 感情に関する文脈: sad, happy, moved, cry, laugh など
- 人の顔や目に関する描写: eyes, face, cheek など
- 感情を表す語句と共にある: “tears of joy” (嬉し涙), “tears of sorrow” (悲しみの涙)
例: Her eyes filled with tears. ←「目」という単語があるので「涙」
「破る」のtear /teər/ を示すサイン:
- 物理的な動作を表す文脈: pull, rip, destroy など
- 具体的なモノに関する描写: paper, cloth, letter, document, package など
- 力を加える動作を表す語句と共にある: “tear into pieces” (粉々に引き裂く)
例: Don’t tear the package. ←「包み」という単語があるので「破る」
よくある間違いと対策
学習者が陥りがちな間違いを再確認し、対策を立てましょう。
間違い例①: 発音の混同
❌: “I shed tears” を「アイ シェッド テアーズ」と発音してしまう。
✅: 正しくは「アイ シェッド ティアーズ /tɪərz/」。発音練習を繰り返しましょう。
間違い例②: 活用の混同
❌: “I teared the paper”(「破る」の過去形として `ed` をつけてしまう)
✅: 正しくは “I tore the paper”。不規則動詞の活用は暗記が必須です。
間違い例③: 文脈の誤解
❌: “The movie tears me.”(感動して涙が出る、と言いたい場面で)
✅: 正しくは “The movie brings tears to my eyes” や “The movie moves me to tears“。自然なコロケーション(語の組み合わせ)を覚えましょう。
【応用】類義語との使い分け
`tear` の理解をさらに深めるために、似た意味を持つ他の単語とのニュアンスの違いを知っておきましょう。
「泣く」関連:cry, weep, sob との違い
- shed tears
- 「涙を流す」という行為そのものを客観的に、あるいは少し文学的に表現します。
- cry
- 最も一般的で、声を出すかどうかに関わらず「泣く」全般を指します。
- weep
- 声はあまり出さず、静かに、しかし深く悲しんで泣く様子。文学的でフォーマルな響きがあります。
- sob
- しゃくりあげながら、嗚咽して激しく泣く様子を表します。
「破る」関連:rip, break との違い
- tear
- 紙や布など、薄いものを引き裂くイメージ。必ずしも直線的に破れるとは限りません。
- rip
- 布や紙などを、勢いよく、あるいは荒々しく「ビリッと」引き裂く強いニュアンス。しばしば音を伴うイメージです。
- break
- ガラスや骨、お皿など、硬いものを「壊す、割る、折る」という意味で使われ、`tear` や `rip` とは対象物が異なります。
理解度チェック!実践クイズ
ここまでの内容が理解できたか、簡単なクイズで力試しをしてみましょう。各文の `tear(s)` が「涙」と「破る」のどちらの意味で、発音はどうなるか答えてみてください。
第1問: Please be careful not to ( ) the contract.
第2問: He was close to ( ) when he heard the beautiful music.
第3問: Every time his favorite team loses, he ( ) up the newspaper.
【クイズの答え】
第1問: tear(破る /teər/)- 「契約書」という文脈から判断します。
第2問: tears(涙 /tɪərz/)- `close to tears` で「泣きそう」というイディオムです。
第3問: tears(破る /teərz/)- 主語が `he`(三人称単数)で、目的語が `newspaper` なので「破る」の三単現です。
まとめ:tearとtearsを完全マスター
ここまで「tear」と「tears」の違いについて、発音から語源、実践的な使い方まで詳しく解説してきました。最後に、最も重要なポイントをまとめておきましょう。
- 発音で区別する
涙:/tɪər/(ティア)、/tɪərz/(ティアーズ)
破る:/teər/(テア)、/teərz/(テアーズ) - 文脈で判断する
感情的な文脈 → 「涙」の意味
物理的な動作の文脈 → 「破る」の意味 - 重要な活用・用法を覚える
「破る」の活用は不規則変化: tear – tore – torn
「涙ぐむ」という動詞は `tear up`
「泣いている」状態は `in tears`
これらのポイントを押さえれば、もう「tear」で迷うことはありません。最初は少し混乱するかもしれませんが、この記事で学んだことを意識しながら、実際の英語にたくさん触れてみてください。実際に使い、間違え、そして修正していく中で、知識は必ずあなたの血肉となります。
英語学習は継続が鍵です。今日学んだ「tear」の使い分けを、ぜひ実際の会話や文章で積極的に使ってみてください。正しい発音と使い方を身につけることで、より自然で正確な英語表現ができるようになるでしょう。